生体力学:つま先の上がった靴を履くと必要な筋肉の仕事量が減る
Scientific Reports
2020年9月18日
トウスプリングのある靴(つま先の上がった靴)を履くと、底が平らな靴と比べて、歩行に必要な足の筋肉の仕事量が減ることを実験的研究で明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。
トウスプリングは、足指を常に地面より高い位置に維持して、歩行時やランニング時につまずかずに足を前方に移せるようにするため、現代のほとんどの運動靴に採用されている。しかし、自然な足の機能とけがに対する足の脆弱性に対するトウスプリングの影響については、広範な研究が行われていない。
今回、Freddy Sichting、Dan Lieberman、Nicholas Holowkaたちの研究チームは、トウスプリングが足の生体力学的特性に及ぼす影響を対照実験により調べた。この実験では、参加者13人がトレッドミル上を靴を履かずに快適な歩行速度で歩行した。次にSichtingたちは、現代の運動靴の湾曲をシミュレーションするため、参加者につま先部分の上向きの湾曲がそれぞれ異なる4種類の特製サンダルを履かせ、同じ実験を繰り返した。その際、各参加者の膝、足首と足にマーカーを貼付して、三次元運動データを収集した。
Sichtingたちは、トウスプリングによって足指と足骨をつなぐ関節周辺の筋肉の仕事量が減ることを見いだした。つま先の上がり方が足のその他の部分より高ければ高いほど、足の筋肉が関節を支える仕事量は少なかった。
以上の知見は、トウスプリングのある靴が非常に快適で人気がある理由を説明する一方で、トウスプリングのある靴の長期使用が足の筋肉の脆弱化に寄与する可能性のあることを示唆している。これにより、足底筋膜炎(足のかかとの骨と足指をつなぐ部分の炎症)などの一般的な病的状態に対する感受性が高まる可能性があるとSichtingたちは考えている。
doi:10.1038/s41598-020-71247-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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