人間行動:不平等を目の当たりにすると富裕層への課税を支持する気持ちが増す
Nature
2020年9月24日
南アフリカ共和国の低所得者居住地域の住民は、不平等を思い起こさせる物理的実体が存在すると、富裕層への課税を要求する確率が高くなることを示唆する研究論文が、今週、Nature に掲載される。不平等な社会では経済格差が至る所に存在するため、今回の研究は、あまり裕福ではない人々が社会的不平等に対して行動を起こすきっかけとなる状況について重要な知見をもたらしている。
これまでの調査や実験室での研究で、人々は、不平等に関する情報を提示されると行動を変え、例えば、気前が悪くなったり、協力的でなくなったりすることが明らかになっている。しかし、現実世界における不平等を思い起こさせる物理的実体に対して個人がどのような応答をするのかについては、あまり分かっていない。
今回、Melissa SandsとDaniel de Kadtは、高級車の存在が富裕層への課税に関する人々の意見に影響を与えたかどうかを調べた。今回の研究では、南アフリカ生まれの人が、南アフリカのソウェトの低所得者居住地域の繁華街で請願活動を行い、通行人に対して請願書への署名を募った。この調査では、富裕層への課税強化の請願書を見せる場合と原子力発電を代替エネルギー源に切り替えることの請願書を見せる場合を設定した。その結果、近くの路上に高級車を停めておいた場合には、富裕税への支持が増えたが、その一方で、請願書に署名する意欲が抑制されたことも分かった。Sandsとde Kadtは、請願書に署名する意欲が抑制される点を補正した上で、富裕層課税の請願書署名者の割合が11ポイント増えたと報告している。全体的に見て、高級車が停めてあった場合に、通行人が原子力発電所の請願書に署名する確率が相当に低くなったが、対照群が税金に関する請願書に署名する確率とあまり変わらなかった。
同時掲載されるColin TredouxとJohn DixonによるNews & Viewでは「Sandsとde Kadtの研究は、人々が、不平等を思い起こさせる物理的実体を毎日見ていると、抵抗行動に駆り立てられることを明らかにしている」と記されている。あまり裕福ではない人々に署名を働きかけると、規範的抗議行動(例えば、政府が所管する徴税の要求)を取る傾向が強い。このことが、有意義な貢献となって、永続的な変化につながるかどうかは、いまだに分かっていない。
doi:10.1038/s41586-020-2763-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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