気候:グリーンランド氷床の質量減少が前例なきレベルに達するという予測
Nature
2020年10月1日
グリーンランド氷床で、過去1万2000年間に起こったことのない規模の質量減少が今世紀中に起こるという予測を示した論文が、今週、Nature で発表される。このシミュレーションは、グリーンランド南西部を対象としており、温室効果ガスの高排出シナリオに基づいている。海水準上昇に対するグリーンランド氷床の寄与を減らすために温室効果ガス排出量の削減が必要なことを示唆する証拠が積み上がってきているが、今回の研究でも、そうした証拠が得られた。
北極の温暖化に伴って、グリーンランド氷床の質量減少が続いており、海水準上昇の一因になっている。質量減少率は、1990年以降、大幅に上昇している。現在の質量減少率と今後予想される質量減少率が想定外のものなのか、あるいは自然の気候変化に関連したものなのかを明らかにするには、過去のグリーンランド氷床の質量の推移を理解する必要がある。今回、Jason Brinerたちの研究チームは、グリーンランド南西部の地質学的観測結果に基づいて、過去1万2000年間と今後(西暦2100年まで)の高分解能シミュレーションを作成した。
シミュレーションの結果、21世紀のグリーンランド氷床の質量減少が、過去1万2000年間で最大の質量減少率を超えることが示唆された。過去最大の質量減少率は、1万~7000年前に記録された1世紀当たり約6兆トンであり、これは21世紀の最初の20年間(2000~2018年)の推定値である1世紀当たり約6兆1000億トンに近い。しかし、将来の質量減少は、こうした最大の減少率を上回ると予想されている。21世紀末までの質量減少率は、最も低い温室効果ガス排出シナリオと最も高い温室効果ガス排出シナリオに基づいて、8兆8000億~35兆9000億トンの範囲内と推定されている。つまり、21世紀のグリーンランド氷床の氷量減少は、4000年にわたって累積した氷の成長を逆転させ、過去の質量減少率の約4倍に達する可能性がある。Brinerたちは、温室効果ガスの低排出シナリオに従わない限り、前例のないレベルの質量減少率になると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-020-2742-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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