多発性硬化症に対する遺伝子と環境の影響
Nature Communications
2011年6月1日
ヒトの遺伝的変異とビタミンD3の解析が行われ、多発性硬化症(MS)が遺伝子と環境の相互作用によって発生する可能性が示された。この研究の詳細を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
N-グリコシル化に特定の異常があると、神経変性が起こることが知られているが、今回、M Demetriouらはマウスを用いて、N-グリコシル化の過程を研究した。そして、培養細胞において、ヒトにおいて多発性硬化症のリスク因子であることが知られる遺伝子が、N-グリカンの分岐形成に影響する場合があることを明らかにし、多発性硬化症のリスクと関連する遺伝子、N-グリカンの分岐形成と神経変性が結びついている可能性を示した。また、Demetriouらは、多発性硬化症の症例対照コホートを用いて、多発性硬化症のリスクと関連することが知られた遺伝子の変異が、分岐形成遺伝子の遺伝的多型と相互作用して、多発性硬化症の発症確率を高める可能性を明らかにした。
ビタミンD3は、日光に当たることで生成され、多発性硬化症とも関連することが知られているが、Demetriouらは、ビタミンD3の役割についても調べ、培養細胞において、ビタミンD3もN-グリカンの分岐形成を促進し、マウスにおいてビタミンD3濃度が低下すると、T細胞における分岐形成が遮断されることを明らかにした。以上の結果をまとめると、環境要因と遺伝的要因が相互作用して多発性硬化症を引き起こすという機構が示唆されている。
doi:10.1038/ncomms1333
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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