進化:東南アジアにおけるヒト族の進化を取り巻く環境的状況
Nature
2020年10月8日
東南アジアへ移動した後のヒト族の進化は、中期更新世にサバンナだった地域が完新世までに密な熱帯雨林に置き換わるという気候変動を背景にして起こったことを明らかにした論文が、今週、Nature に掲載される。今回の分析から、東南アジアでのヒト族の進化を取り巻く環境的状況と、動物の絶滅との関連が明確になった。
東南アジアはヒト族と哺乳類の移動と絶滅を解明する上で重要な地域である。以前の注目すべき発見によって、東南アジアにはヒト属の種が少なくとも5種生息していたことが明らかになっている。炭素同位体と酸素同位体の違いから過去の植物や利用可能な水量に関する手掛かりを得ることのできる安定同位体試験は、アフリカでのこうしたヒト族の進化的変化を取り巻く環境的状況を明らかにするために長い間用いられてきたが、東南アジアに関してはほとんど調べられていなかった。
Julien LouysとPatrick Robertsは今回の論文で、第四紀(260万年前~現在)を通じた東南アジアの哺乳類の安定同位体データの大規模データセットを示した。このデータから、前期更新世(約260万~77万4000年前)に森林だった地域が、中期更新世(約77万4000年前~)までにサバンナへと変化し、これが、草食動物の分布拡大とブラウザー(低木の葉や果実を食べるヤギやシカなどの採食動物)の絶滅につながったことが明らかになった。サバンナは、後期更新世(約12万9000年前~)に後退し、完新世(1万1700年前)までに完全に消失して、林冠の閉鎖した熱帯雨林に取って代わられた。この変化により、サバンナや森林が生息地だったホモ・エレクトス(Homo erectus)やその他の動物が犠牲になり、熱帯雨林に適応した動物種と適応能力の高いホモ・サピエンス(Homo sapiens)が優勢になった。
doi:10.1038/s41586-020-2810-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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