生態学:西サハラ地域とサヘル地域の高木数が予想を上回る
Nature
2020年10月15日
西アフリカのサハラ地域、サヘル地域、亜湿潤地帯に、合計18億本以上の高木が存在することを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。高分解能衛星画像とディープラーニングの併用により、こうした乾燥地域での高木被覆率が比較的高いことが明らかになった。
非森林地域の高木の分布を正確に図示できれば、そのような高木によって環境が形成される過程と高木の周囲に生物が生息できるようになる過程についての手掛かりが得られる可能性がある。しかし、一般に用いられている衛星技術の分解能は約10~30メートルで、個々の高木や低木を識別するには不十分であるため、木々の本数を数えるのは難しい。乾燥地域の地図の作成を試みた以前の研究では、乾燥地域に高木や低木がほとんど存在していないことが示唆されていた。
今回、Martin Brandtたちの研究チームは、西アフリカのサハラ地域、サヘル地域、亜湿潤地帯(総面積130万平方キロメートル)の高木と低木(林冠が3平方メートル以上)の詳細なについて報告している。Brandtたちは、1万1000点以上の高分解能衛星画像(空間分解能0.5メートル)とディープラーニング技術を用いて18億本以上の高木を個別に検出した。その結果、高木のサイズと密度は降水量と土地利用に関連しており、林冠被覆地の占める割合が、超乾燥地域では0.1%であるが、亜湿潤地帯では13.3%まで増加することが明らかになった。
乾燥地域で孤立して生育する高木や低木は、生物多様性への貢献、避難所や食料資源の提供、環境保全への寄与(例えば、侵食を防いだり、炭素吸収源として作用したりすることによる)など重要な役割を担っている。今回のBrandtたちの手法は、全世界の非森林地域の高木をモニタリングし、こうした高木が劣化や気候変動、貧困の緩和に果たす役割を探るための方法を示唆している。
doi:10.1038/s41586-020-2824-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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