天文学:原子状水素放出の測定結果が星形成に関する新知見をもたらす
Nature
2020年10月15日
赤方偏移の平均値が1である銀河群からの原子状水素の放出を初めて測定したことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の観測は、インドに設置された改良巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)によるもので、銀河における星の形成についての理解に役立つ可能性がある。
星の形成には、銀河へのガスの落下によって原子状水素が生成し、その後、分子状態(H2)へ変換されて、星形成に用いられるという過程が関係している。原子状水素は、赤方偏移が0.4までの銀河で検出されているが、赤方偏移がこれより大きい銀河について既存の望遠鏡で測定を行うことはこれまで不可能だった。赤方偏移とは、天体が遠ざかるにつれて、その天体が発する光の波長がどれだけ長くなるのかを示す尺度で、銀河までの距離を測定するために使用できる。より遠方にある銀河に関する原子状水素の測定結果がないため、銀河の進化が十分に解明されていない。
今回、Aditya Chowdhury、Nissim Kanekarたちの研究チームは、赤方偏移が0.74~1.45の星形成銀河7653個を対象として、原子状水素の放出を探索した。その結果、原子状水素の平均総質量が星の平均質量に匹敵し、あるいはそれ以上である可能性もあり、星形成にとって十分な量の材料が提供されていることが明らかになった。Chowdhuryたちが星形成率を推定したところ、観測された原子状水素の質量では、この星形成率を今後10~20億年間しか維持できないことが判明した。これは、赤方偏移1未満の銀河へのガスの降着が、高い星形成率を維持する上で不十分な状態が続いていることを示唆している。
doi:10.1038/s41586-020-2794-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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