健康:にきびの発生に関する新たな知見から明らかになった治療標的候補
Nature Communications
2020年10月21日
ざ瘡(にきび)の症例では、GATA6タンパク質の発現が低下していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、将来の治療薬開発の際にGATA6が治療標的になり得ることを示唆している。
ざ瘡は最も一般的な皮膚疾患の1つで、世界中で約6億5000万人が罹患している。しかし、その発生に関与する分子機構は完全には解明されていない。
GATA6(GATA結合タンパク質6)は、ヒトの皮膚の上部毛嚢脂腺ユニット(毛包とそれに付随する皮脂腺)で発現している。今回、Fiona Wattたちの研究チームは、健常対照者5人とさまざまな重症度のざ瘡患者9人の皮膚生検を行ったところ、ざ瘡症例ではGATA6の発現レベルが低下していることが観察された。また、Wattたちは、ヒト皮膚細胞株を用いて、GATA6が上部毛嚢脂腺ユニットの恒常性に寄与するいくつかの生理的過程を制御していることを見いだした。そうした過程の1つが毛包内のケラチノサイト(ケラチンを産生する表皮細胞)の増殖と分化の制御であり、これらはざ瘡の場合には調節されていない。さらに、Wattたちは、GATA6の発現が、ざ瘡の治療に用いられるレチノイン酸によって誘導されることを発見した。
Wattたちは、ヒト皮脂腺オルガノイドモデルを開発して、GATA6がシグナル伝達経路を介して面皰(毛穴の詰まり)の形成を防いでいる可能性があるという証拠を得た。Wattたちは、今回の知見が、ざ瘡の研究と治療のための新たな道を開く可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-18784-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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