インドでは灌漑が湿度に関連した熱ストレスを強化する
Nature Geoscience
2020年10月27日
インドでは、灌漑によって湿度が高くなり、これが、最大4600万人が影響を受ける「湿熱ストレス」を増大させていることを報告する論文が、Nature Geoscience に掲載される。熱ストレスは、ヒトの体が自らを冷やすことができないときに生じ、環境の温度が高いことだけで生じる場合(乾熱ストレス)と、温度と湿度が高いことで生じる場合(湿熱ストレス)がある。後者は、インドでの死亡率と密接な関連がある。
現在進行している人為起源の気候変動は、インドで極端な高温を生じさせると予想されており、特に屋外で働く人の熱ストレスを悪化させる可能性がある。さらに、インドの灌漑地域はこの数十年間で倍増している。灌漑システムからの水の蒸発による冷却は、乾熱ストレスを一部打ち消す可能性があるが、湿熱ストレスに影響を及ぼし得る湿度について、関連する変化はよく分かっていない。
今回、Vimal Mishraたちの研究チームは、乾熱ストレスと湿熱ストレスの両方に対する灌漑の影響を、現場での観測と人工衛星による観測、および最新の数値シミュレーションを用いて分析した。その結果、灌漑は地表の温度を下げるが、大気の最下層(大気境界層)の高度を低下させることにより、地表の湿度を顕著に上昇させることが明らかになった。その結果、灌漑は乾熱ストレスを軽減するが、湿熱ストレスを強化する。
Mishraたちは、近年インドで灌漑が増大していることが湿熱ストレスを強化し、インドと隣国のパキスタンやアフガニスタンにわたって、湿熱ストレスに関連する人々の健康リスクを増大させると結論付けている。灌漑による同様な影響は、同じように降雨量の少ないモンスーン気候の地域でも起きると予想されている。
doi:10.1038/s41561-020-00650-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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