惑星科学: 月面における分子状の水の検出と低温の「水捕捉」
Nature Astronomy
2020年10月27日
月面で分子状の水(H2O)が明確に検出されたこと、そして水が安定的に捕捉される可能性のある月の領域を明らかにしたことを報告する2編の論文が、今週、Nature Astronomy に掲載される。これらの知見は、将来の月探査に影響を与える可能性がある。
これまでの研究から、月の表面、特にその南極周辺で水和物の形跡が報告されていた。しかし、これらの検出は3マイクロメートル波長のスペクトル特徴に基づいており、この波長では鉱物中のH2Oとヒドロキシル基結合を識別できない。
一方の論文で、Casey Honniballたちの研究チームは、6マイクロメートル波長で月を観測する遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)の飛行望遠鏡からのデータを解析した。この波長でHonniballたちは、他のヒドロキシル化合物と共有されていないH2Oのスペクトル特徴を検出することができた。また、南半球の高緯度領域にはおよそ100~400 ppmの存在度で水が存在することが分かった。Honniballたちは、検出された水は、おそらくガラス質の物質中、あるいは粒状物間に保存されていて、月面の厳しい環境から保護されていると示唆している。
もう一方の論文では、Paul Hayneたちの研究チームが、コールドトラップと呼ばれる永久影の領域の分布を調べた。こうした領域では、水が捕捉されて永久に残る可能性がある。Hayneたちは、コールドトラップのサイズについて、直径1センチメートル以上のものを全て評価した。その結果、小さな「マイクロ」コールドトラップが、大きなコールドトラップの数百~数千倍存在していること、そして、これらのコールドトラップは両方の極に見られることが明らかになった。Hayneたちは、月の表面のおよそ4万平方メートルで水が捕捉されると示唆している。
これらの知見は、月ではさまざまな過程によって水が効率的に作られたり、輸送されたりして、月の両方の極領域にあるコールドトラップに蓄えられた可能性があることを示唆している。月での水の存在は、これらの潜在的な氷のリザーバーを標的にしてアクセスする将来の月探査に影響を与える可能性がある。
doi:10.1038/s41550-020-01222-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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