気候変動:氷の融解がさらなる地球温暖化をもたらす
Nature Communications
2020年10月28日
世界中の極域や山岳地帯における氷の融解は、地球温暖化を進行させて、長期的には地球の気温をさらに摂氏0.43度押し上げる可能性のあることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
氷に覆われた地域の減少は、アルベド(太陽光が地表によって反射される率)の変化などを介して、気温に影響を及ぼすことが知られている。温暖化が加速する原因となる機構は十分に解明されているが、さまざまな氷床とフィードバック機構が全球気温の変化にどの程度寄与するのかは明らかになっていない。
今回、Nico Wunderlingたちの研究チームは、単純化した地球システムモデルを用い、さまざまなCO2濃度レベルを設定して、こうした寄与度を推算した。その結果、CO2濃度が現在のレベル(400 ppm)で全ての氷床が消失した場合、摂氏0.43度(中央値)のさらなる温暖化が起こることが明らかになった。氷塊別の寄与度は、西南極氷床の消失による摂氏0.05度から、夏季の北極の海氷の消失による摂氏0.19度の範囲であった。ただし、これらの実験では、CO2濃度の長期的推移や、より短い時間スケールで影響を与える可能性のあるフィードバック機構は考慮されていない。さらに、Wunderlingたちは、この地球温暖化は、数年から数十年のスケールではなく、数世紀から数千年の時間スケールで生じると指摘している(ただし、Wunderlingたちは、21世紀末までに夏季の北極から氷がなくなる可能性のあることを明示している)。従って、今回の知見は、さまざまな氷源とフィードバック機構の寄与度に関する理想化された推定結果と解釈されるべきである。
doi:10.1038/s41467-020-18934-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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