生態学:米国で騒音と光害が鳥類に及ぼす影響を評価する
Nature
2020年11月12日
騒音と光害は、鳥類の繁殖にさまざまな影響を及ぼしていることを報告する論文が、Nature に掲載される。この知見は、米国全土で行われた市民科学プロジェクトのデータに基づいており、環境保全の取り組みにおいて、騒音と光害を他の環境要因と一緒に考慮する必要があることを示唆している。
人間活動が生み出す騒音と光は、環境保全上の懸念として頻繁に取り上げられるようになっている。これまでの研究から、これらの刺激に対する生理的応答や行動的応答が明らかになっているが、これらが繁殖の成功にどのような影響を及ぼし、影響の出方が生物種によってどのように異なっているのかは十分に解明されていない。
今回、Clinton Francisたちの研究チームは、2000~2014年に市民科学プロジェクトによって5万8506例の巣から収集されたデータを用いて、米国内の142種の鳥類に対する騒音と光害の影響を調べた。Francisたちは、最初の産卵日、一腹卵数、孵化の一部失敗、営巣失敗、巣立ちの成功を調べた上で、人間活動による騒音と光害に関する地理空間データと組み合わせた。その結果、曝露光量の多い鳥類は、曝露光量の少ない鳥類よりも約3~4週間早く産卵を始めていたことが分かった。また、森林のような閉鎖的な生息地を好む鳥類は、明るい場所でのクラッチ数(一腹卵数)が暗い場所よりも約16%多かった。閉鎖的な生息地の鳥は、騒音にさらされるとクラッチ数が減少したが、この影響は、草原や湿地のような開放的な生息地の鳥では観察されなかった。
Francisたちは、人間活動が生み出す騒音と光が、鳥類の繁殖と適応度に影響を与えることがあり、閉鎖的な生息地の鳥は、開放的な生息地の鳥よりも騒音と光に対する感受性が高いと結論付けており、生物多様性保全を実施する際にこうした公害の要因を考慮する必要性を強調している。
doi:10.1038/s41586-020-2903-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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