生態学:渡りをする鳥類と哺乳類は生活のペースが速い
Nature Communications
2020年11月18日
渡りをする哺乳類と鳥類は、渡りをしない近縁種と比べて生活のペースが速い、つまり、寿命が短く、成長が早く、より多くの子孫をより短期間で産出することを包括的分析によって明らかにした論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、異なる生活史を持つ鳥類や哺乳類が環境の変化にどのように応答するかを予測する上で重要な意味を持つ可能性がある。
渡りには多大なコストがかかるにもかかわらず、毎年、数十億匹の動物が渡りをする。しかし、渡りをする動物種としない動物種で、生活史戦略(寿命、成長速度、出生率など)にどのような違いがあるのかは明らかになっていない。
今回、Stuart Bearhop、Andrea Soriano-Redondoたちの研究チームは、進化史、体サイズ、地理的位置を調整した後、700種以上の鳥類と540種以上の哺乳類を比較して、渡りと生活史がどのように関連しているかを調べた。その結果、渡りを行う動物種は、渡りを行わない近縁種よりも生活のペースが速いことが分かった。この結果は、渡りに伴う時間、エネルギー、リスクと、生物の生存・繁殖への投資がトレードオフの関係にあることを予測したこれまでの研究を支持するものである。また、Bearhopたちは、遊泳種と歩行種の中で渡りをする種は体サイズが大きく、飛翔種(コウモリや大部分の鳥類)の中で渡りをする種は体サイズが小さい傾向があることを明らかにし、この理由が、遊泳・歩行種と飛翔種では、渡りのエネルギーコストが体サイズによって異なるためであると示唆している。
Bearhopたちは、今回得られた知見は、環境の変化による影響を受ける可能性の高い生物種を予測する上で重要な意味を持つ可能性があると結論付けており、研究が比較的進んでいない爬虫類、両生類、昆虫類などの渡りを行う生物種の研究を強化するよう呼び掛けている。
doi:10.1038/s41467-020-19256-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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