環境:微粒子大気汚染における有害成分の発生源が特定された
Nature
2020年11月19日
ヨーロッパの大気質を分析した結果、粒子状物質の濃度低下を目的とした緩和戦略は、健康に悪影響を及ぼすと考えられるこの種の汚染の酸化能を抑制できるとは限らないことが示唆された。このことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この知見は、ヨーロッパにおける粒子状物質の発生源と酸化能の発生源が異なることを示している。
大気中の粒子状物質は、全世界の数百万人の早死者に関係があるとされている。こうした粒子状物質の健康へのリスクはそれらの濃度に基づいて予測される傾向があるが、粒子のサイズや組成もその一端を担っていると考えられている。粒子の酸化能(細胞内の分子の酸化を増進する能力で、細胞の損傷を引き起こす可能性がある)は、粒子状物質が健康に影響を及ぼす数多くの原因の1つだ。しかし、酸化活性を制御する可能性のある粒子状物質の発生源は明らかになっていない。
今回、Kaspar Dällenbachたちの研究チームは、スイス国内の観測地点で大気汚染試料を採取して、それらの酸化能を評価した。次にDällenbachたちは、この測定結果を大気質のモデリングと組み合わせて、ヨーロッパ全土における粒子状物質と酸化能の発生源を定量化した。その結果、粒子状物質の質量濃度の大部分が、鉱物ダスト、植生から放出される物質から間接的に生成される二次有機エーロゾル、人間の活動によって放出される物質から間接的に生成される二次無機エーロゾル(アンモニウム、硝酸塩、硫酸塩など)によって制御されていることが判明した。これに対して、酸化能の主な発生源は、車両から放出される排気ガス以外の物質(ブレーキをかけると発生する物質など)に由来する金属や、主に住宅でのバイオマス(木材など)の燃焼によって生じる二次有機エーロゾルなど、人為起源のものだった。
doi:10.1038/s41586-020-2902-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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