動物学:生体鉱物からなる被甲を持つ昆虫が初めて発見された
Nature Communications
2020年11月25日
生物自体が作り出す鉱物(生体鉱物)からなる被甲を持つ海洋生物は数多く見つかっているが、このほど、そうした昆虫種の初めての実例となるパナマハキリアリ(Acromyrmex echinatior)が見つかったことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この発見は、被甲の進化を解明する上で重要な意味を持つ可能性があり、自然界における生体鉱物の使用についての我々の知識を広げる。
生体鉱物からなる骨格は、5億5000万年以上前に出現した。この種の被甲は、ロブスターなど甲殻類や他の海洋動物で観察されているが、昆虫には見つかっていなかった。
Cameron Currieたちの研究チームは、パナマハキリアリの働きアリの外骨格が、マグネシウムを多量に含む方解石でできた被甲で覆われていることを発見したと報告している。今回の研究では、パナマハキリアリが成熟するにつれて被甲が発達して、外骨格の硬度が増し、ほぼ全身を覆うようになることが明らかになった。Currieたちは、生体鉱物化した外骨格を持つ働きアリは、そのような外骨格を持たない働きアリに比べて、ハキリアリ(Atta cephalotes)の兵隊アリと遭遇した時に生き延びる確率が高く、また、この被甲が昆虫病原菌Metarhizium anisopliaeへの感染を防御する上で役立っているという観察結果を示している。
Currieたちは、生体鉱物からなる被甲が比較的よく研究されている昆虫種で発見されたことは、こうした被甲がこれまで考えられていたよりも広範に見られる可能性を示唆していると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-19566-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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