環境:気候変動緩和のための森林管理活動のコスト予測
Nature Communications
2020年12月2日
森林管理活動によって、2055年までに全球二酸化炭素排出量を年間最大6ギガトン(60億トン)削減できる可能性があり、そのためのコストは年間3930億ドル(約43兆2300億円)となることを示唆するモデル研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
森林は、全球気候の安定化に寄与し、温室効果ガス排出量を大幅に削減する能力を備えている点で極めて重要だと理解されている。しかし、このプロセスの管理に伴うコストは明確になっていない。
今回、Kemen Austinたちの研究チームは、世界の森林部門の経済モデルを用いて、林業活動を通じて温室効果ガス排出量を削減して、温暖化を産業革命以前と比べて摂氏1.5度までに抑えるという目標を達成するためのコストを調べた。Austinたちは、16の地域における4つの活動(森林破壊の防止、森林管理活動、伐採周期の長期化、新規植林・再植林)について、気候変動の緩和可能性とコストの予測を行った結果、森林に隔離されるCO2を2055年までに年間6ギガトンまで引き上げることができ、そのために年間最大3930億ドルが必要になると予測した。熱帯における森林破壊の防止は、このシナリオに最も大きな影響を与えると考えられ、緩和量の全体の30~54%に寄与すると考えられている。また、Austinたちは、新規植林・再植林によって隔離されるCO2の合計が2055年までに年間2.6ギガトンに達すると予測している。
Austinたちは、今回の知見によって、全球の気候変動の緩和を高い費用対効果で実現する上で、世界の森林部門が非常に重要な役割を果たす可能性のあることが確認されたと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-19578-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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