動物行動学:生後4か月のカラスの認知パフォーマンスは成体の大型類人猿に匹敵するかもしれない
Scientific Reports
2020年12月11日
ワタリガラスが現実世界をどれだけ理解しているのか、そして、他のワタリガラスとどのように交流するのかという点を検証するための実験課題によって、ワタリガラスの認知パフォーマンスが生後4か月までに成体の大型類人猿に近づくことが明らかになったと報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Simone Pikaたちの研究チームは、人工飼育したワタリガラス(計8羽)を対象として生後4か月、8か月、12か月、16か月に一連の試験を実施して、認知技能を検証した。認知技能の検査項目は、空間記憶、対象物の永続性(対象物が見えなくなっても存在し続けていると理解していること)、相対数の理解と足し算、実験実施者とのコミュニケーション能力と実験実施者から学習する能力などだった。
この試験で、ワタリガラスの認知パフォーマンスは、生後4か月から16か月までほぼ同じレベルで推移した。この結果は、ワタリガラスの認知技能が比較的急速に発達し、生後4か月までにほぼ完成することを示唆している。生後4か月のワタリガラスは、親からの独立を強め、独自の生態学的環境と社会環境を発見し始める。実験課題のパフォーマンスには個体差があったが、一般的に言って、ワタリガラスは、足し算と相対数の理解に関する試験の成績が最もよく、空間記憶を調べる課題の成績が最も悪かった。
チンパンジー(106頭)、オランウータン(32頭)に同じ課題を行わせた以前の研究で判明した、チンパンジーとオランウータンの認知遂行をワタリガラスと比較したところ、ワタリガラスの認知遂行行動は、空間記憶以外の項目で、オランウータンやチンパンジーに非常に近かった。
今回の研究によって得られた知見は、ワタリガラスが、大型類人猿と同じように、一般的な認知技能と高度な認知技能を発達させたと考えられることの証拠になっている。Pikaたちは、ワタリガラスがこうした技能を発達させたのは、常に変化する環境での生活に対応するためだったという仮説を提起している。そうした環境では、ワタリガラスの生存と繁殖は、ワタリガラス間の協力と提携に依存している。ただし、Pikaたちは、研究対象のワタリガラスのパフォーマンスがワタリガラス全体の代表例であるとは限らない点に注意を促している。
doi:10.1038/s41598-020-77060-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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