創薬:マウスを複数種のヘビ毒から守る併用療法
Nature Communications
2020年12月16日
2種類の小分子ヘビ毒阻害剤を併用することで、マウスを複数種の毒ヘビの毒から守れることが実証された。この結果について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、複数のヘビ毒阻害剤を併用することが、ヘビ咬傷に対する広域スペクトル療法の開発につながる可能性を示唆している。
サハラ砂漠以南のアフリカ、南・東南アジア、中南米の農村地域では、ヘビによる咬傷で年間約13万8000人が命を落としている。ヘビ毒は、ヘビの種類によって組成が異なるため、抗体に基づく抗毒素療法は、特定のヘビ種による咬傷にしか有効性を発揮しない傾向がある。
今回、Nicholas Casewellたちの研究チームは、ヘビ毒に対する広域スペクトル療法に複数の小分子ヘビ毒阻害剤を併用することの可能性を検討した。Casewellたちは、実験室での実験で、第2相臨床試験を経た一定数の分子が、複数の毒素ファミリーを阻害して、ヘビ毒を中和できることを見いだした。またCasewellたちは、マウスを用いた実験で、ヘビ毒を投与してから15分後に2種類の阻害剤(マリマスタットとバレスプラジブ)を単回併用投与し、その後24時間、これらのマウスを観察した。その結果、これらの小分子はマウスの死を防ぐことができ、アフリカ、南アジア、中米に生息する数多くの毒ヘビの毒に対して有効であることが明らかになった。
Casewellたちは、今回のデータが、小分子ヘビ毒阻害剤の併用によって医学的に重要な複数のヘビ毒を中和できることの証拠になると結論付けている。さらなる前臨床研究が必要だが、Casewellたちは、この治療法が将来的に、ヘビ咬傷に対する入院前治療に用いられる可能性があるという見方を示している。
doi:10.1038/s41467-020-19981-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications