生態学:ヨーロッパの河川はあちこちでせき止められている
Nature
2020年12月17日
ヨーロッパの河川は、ダムなどの100万か所以上の障壁によって分断されていることを明らかにした包括的評価について報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究には、2700キロメートル以上の河川の調査が含まれており、ヨーロッパの河川における障壁の数が61%過小評価されていることが示唆されている。
河川は、重要な生態系であるとともに、社会のための社会経済的サービスを提供する。しかし、人間の活動は、ダム、せき、浅瀬などの人工的な障壁によって河川の流れを変えてきた。河川の分断は河川の生態系に悪影響を及ぼすことがあるが、これらの障壁の影響の評価は情報不足のために進んでいない。今回、Barbara Belletti、Carlos Garcia de Leanizたちの研究チームは、地域レベル、国レベル、全球レベルのデータセットを照合して、河川における個々の障壁の数を評価した。Bellettiたちは、特定の河川区間に沿って歩き、障壁の数と特徴を記録して、既存のデータセットには小規模の障壁の数を実際より少なく数える傾向があることを明らかにした。
Bellettiたちは、現地調査によって修正・スケールアップされた推定値を用いて、ヨーロッパの36か国に120万か所の河川内障壁があることを見いだした。これらの障壁の68%は、高さ2メートル未満の小型構造物で、従来の調査では見落とされることが多かった。障壁の大部分は、せきやダムのように河川の流れを制御するためか、道路が横断できるようにするために建設されたものだった。障壁の密度が最も高いのは中央ヨーロッパで、最も低いのはスカンジナビア、アイスランド、スコットランドだった。ヨーロッパの河川流域には例外なく人工的な障壁が建設されているが、バルカン半島やバルト諸国の一部、スカンジナビア、南ヨーロッパの河川は、比較的分断されていない状態が保持されていた。Bellettiたちは、今回の知見が、2030年までにヨーロッパの河川を再接続することを目標としたEUの生物多様性戦略の実行に役立つ情報となると考えている。
doi:10.1038/s41586-020-3005-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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