神経科学:あなたが微笑むとき、世界中の人々も微笑んでいる
Nature
2020年12月17日
さまざまな社会的状況において、世界中の人々が同じような表情を示すことを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の研究では、600万本以上のビデオが分析され、世界中の人々がさまざまな社会的状況下で示す表情にかなりの普遍性があることが示唆された。ただし、今回の知見から感情そのものに普遍性があると断定されたわけではなく、日常生活の中で感情がどのように表現されるかについて十分に偏りのない見解を得るには、さらなる研究が必要だ。
世界中の人々は、結婚式では笑顔が多く、葬式ではしかめっ面が多いのだろうか。こうした表情が、文化を越えて保存されているかを評価することは困難であり、これまでの研究は、言語の障壁とサンプルの少なさという制約のある調査に基づいて行われていたため、感情の普遍性に関する見解が分かれていた。今回、Alan Cowenたちの研究チームは、機械学習の一種である深層ニューラルネットワーク(DNN)を用いて、現実世界での行動を評価し、社会的状況が文化の違いを超えて特定の表情と関連するかを確認した。
今回の研究では、インド国内で英語を話す人々がDNNを訓練し、それぞれ独自の英語の感情カテゴリーと関連する16種の顔の表情パターンを識別できるようにした。次に、DNNは、類似した複数の表情パターンを個々の表現(例えば、笑顔)としてクラスター化することを学習した上で、144か国で制作された600万本のYouTube動画を評価して、類似した状況下で類似した表現が世界中で頻繁に見られることを明らかにした。例えば、「畏敬の念」、「満足感」、「勝利」と標識された顔の表情は、さまざまな地域の結婚式やスポーツイベントと主に関連していた。また、それぞれのタイプの顔の表情は、世界の12の地域で70%保存されている一連の状況と明確な関連性を有しており、世界中でかなりの普遍性があることが示唆された。
以上の知見は、感情の原因、機能、普遍性を解明する上で重要な意味を持っている。同時掲載のNews & Viewsで、Lisa Feldman Barrettは、今回の研究で、これまでの研究よりも自然な条件で表情と社会的状況との関連性が特定された点を指摘している。また、Barrettは、今後の研究では、より多様な文化集団を使ってDNNを訓練し、英語を話す人々の信念や固定観念だけに依存することを避けるべきだという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-020-3037-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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