気候変動:湖沼熱波は21世紀末まで勢いを増す可能性が高い
Nature
2021年1月21日
湖沼熱波(湖沼の表層水温が極端に高くなる期間)の強度と継続期間が、21世紀末まで上昇と長期化を続けると考えられることが、このほど実施されたモデリング研究から示唆された。この知見を報告する論文が、Nature に掲載される。今回の研究から、温室効果ガスの排出量が多いシナリオの下では、湖沼熱波の平均継続期間が平均3か月ほど長くなる可能性があり、一部の湖では熱波状態が永続する可能性があることが示された。
陸上や海面での熱波の発生頻度の上昇は、地球温暖化に関連すると考えられてきた。しかし、湖沼熱波の実態や、湖沼熱波が地球温暖化の影響をどのように受けるかについては、あまり解明されていない。湖沼生態系は温度変化に対して脆弱で、地球温暖化に対する湖沼の反応は湖沼環境に依存する生物に影響を及ぼす。
今回、Iestyn Woolwayたちの研究チームは、1901~2099年に熱波が702か所の湖に及ぼす影響をモデル化した。その結果、温室効果ガス排出量の多いシナリオ(RCP 8.5)の下では、湖沼熱波における平均水温は摂氏約3.7度から5.4度へと上昇し、平均継続期間は約1週間~3か月以上長期化することが明らかになった。最も控えめな排出シナリオ(RCP 2.6)の下では、湖沼熱波の平均水温の上昇幅は約4.0度で、平均継続期間の長期化は約1か月だった。Woolwayたちは、水深60メートルまでの湖を今回の予測の対象としており、深い湖では熱波の継続期間は長くなるが、強度は低下することも明らかにした。
Woolwayたちは、21世紀を通して湖沼が温暖化することに伴い、熱波が全ての季節に拡大し、一部の湖沼は熱波状態が永続するようになるという考えを示している。また、Woolwayたちは、熱波現象の激化は湖の生物多様性を脅かし、生態系を回復の限界点に追いやる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-020-03119-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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