社会学:スイスにおける少数民族出身者に対する雇用差別
Nature
2021年1月21日
スイスのオンライン採用プラットフォームの調査から、移民や少数民族出身の求職者は、採用担当者からの接触率が4~19%低いことを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の研究では、ジェンダーによる差別の証拠も見つかった。
女性や少数民族出身者は、世界中の多くの国々の労働市場で悪い結果を経験しているが、このことに差別がどの程度の影響を及ぼしているのかや、こうした悪い結果が生じる経路などについては議論がある。コレスポンデンステスト(研究者が、求職者名がアフリカ系アメリカ人と感じられるか、白人と感じられるか以外は全く同じ架空の履歴書を送る)は、採用実務における差別を定量化する方法としてよく利用されるようになってきている。ただし、このテストでは通常、一度に使える変数は数種類に限られる。
今回、Dominik Hangartnerたちの研究チームは、求人サイトでの採用担当者の検索行動の追跡と機械学習を組み合わせて、採用担当者が観察できる求職者の重要な特徴を全て管理する、雇用時の差別を調査する方法を開発した。Hangartnerたちは、この方法をスイスの公共職業紹介所の採用プラットフォームに適用した。これは、スイスの求職者が利用する主要なプラットフォームで、失業者として登録された求職者全体の85%が、このプラットフォーム上にプロフィールを登録している。調査の結果、移民と少数民族出身者は、スイス生まれのスイス人よりも採用担当者による接触率が4~19%低いことが判明した。また、男性優位の職業では女性は採用担当者による接触率が7%低く、女性優位の職業では男性が逆のパターンを示した。
Hangartnerたちは、今回の方法が、コスト効率がよく、利用者に負担をかけないツールとなり、研究者や政策立案者が雇用時の差別を監視し、それに対抗する戦略を構築するために使用できると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-020-03136-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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