農業:海鳥グアノが紀元1000年以降のアタカマ砂漠でのロバストな農業を促進した
Nature Plants
2021年1月26日
「白い金」として知られる海鳥グアノ肥料は、アタカマ砂漠の乾燥地域にありながら生産性が高かった、前インカ文明の農業システムに貢献した可能性があることを報告する論文が、Nature Plants に掲載される。この知見は、現在のチリ北部で紀元1000~1450年に大規模な人口集積地と社会が発達したことに光を当てるものである。
世界で最も乾燥した砂漠に位置するロバストな農業システムが、数世紀にわたって前インカ文明を支えていた。スペイン人が侵略する以前のチリ北部の考古学的記録には、説明のつかないレベルの農業の成功を示唆する、多様な作物が大量に保存されている。
今回、Francisca Santana-Sagredoたちは、アタカマ砂漠で得られた紀元前1000~紀元1800年のトウモロコシ、チリペッパー、ウリ、豆類、キヌア、野生地場果実の完全な標本を分析した。その結果、紀元1000年頃から窒素同位体値が大幅に上昇していることが分かった。最も変化が大きかったのはトウモロコシで、窒素同位体値は30‰上昇していた。Santana-Sagredoたちはまた、同じ地域と年代範囲の800以上の既報のヒト同位体値を分析して、ヒトの骨のコラーゲンが同様の傾向をたどっていることを明らかにした。さらに、炭素同位体値の有意な上昇も明らかになり、同時代にトウモロコシの消費量が増加したことが示唆された。
Santana-Sagredoたちは、こうした窒素同位体値の極端な上昇(考古学的植物に関しては世界最高の上昇)は、海鳥グアノを作物の肥料として使用したことによるものだと考えている。彼らは、海鳥グアノ肥料の使用が農業の集約化と人口増加、さらには、こうした極端な環境条件ではあまり見られない社会の複雑性に強い影響を与えたと主張している。
doi:10.1038/s41477-020-00835-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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