神経科学:脊髄損傷によって誘発された低血圧症を治療する
Nature
2021年1月28日
齧歯類や非ヒト霊長類において、脊髄損傷後の血圧維持を回復させる脊髄刺激療法を実証したことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。ヒト患者を対象とした予備的研究では、ヒトの脊髄もこの治療法に効果的に応答することが示唆されている。
脊髄損傷の治療では、多くの場合、麻痺と感覚消失を主眼とする。しかし、一部の脊髄損傷患者では、血行動態の不安定性(臥位から座位または立位へと動く際に血圧を維持できないこと)が大きな問題となっている。
Grégoire Courtine、Aaron Phillipsたちは以前に、脊髄損傷で麻痺した患者の歩行機能回復に役立つ電気刺激を与える神経機能代替装置を開発した。脊髄損傷では血圧の調節に関与する神経回路が応答しなくなるが、今回、Courtineたちは、この装置を改良して、こうした神経回路を調整する刺激プロトコルを生成した。この神経機能代替装置は、脊髄損傷の齧歯類モデルと非ヒト霊長類モデルにおいて、血流動態を迅速かつ長期間にわたって調節することができた。また、この装置は、血行動態が不安定な脊髄損傷患者においても検証され、正常な血行動態を回復させることが示された。
Courtineたちは、この治療法の安全性と治療効果を脊髄損傷のさまざまな段階で評価するためには、臨床試験が必要だと指摘している。同時掲載されるNews & Viewsでは、Patrice Guyenetが「この方法は、おそらく現在利用可能な治療法に取って代わると考えられるが、断言するにはあまりにも時期尚早だ」と述べている。
doi:10.1038/s41586-020-03180-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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