動物行動:人間によるかく乱は動物の移動に影響を与えてその生存を脅かす
Nature Ecology & Evolution
2021年2月2日
人間活動は、環境中の動物の移動の仕方を変化させることを示した論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。移動の仕方の変化は、動物の生命にとって潜在的なリスクとなり、世界中で絶滅の脅威の一因となる。
人間活動の多くは、動物の移動に影響を与え得る。人間の存在が、狩猟や旅行、娯楽などを通じて、動物に特定の場所を避けさせる直接的な原因となり得る。より間接的には、道路や都市、林業、農業など全てが生息地のかく乱につながり、その結果、動物は、食物やすみか、配偶者を求めて、遠隔地やあまり適していない場所へと移動することになる。例えば、鳥類は、森林伐採によってより遠くへの飛行のを余儀なくされることが多く、爬虫類は、都市化によってその生息域が縮小している。
今回、Tim Dohertyたちは、6大陸の陸生動物と水生動物167種に関する208件の研究からデータを収集し、人間によるかく乱が世界各地で動物の移動を変化させていることを明らかにした。評価した719事例のうち3分の2以上で、動物の移動に20%以上の変化が見られた。また、動物は、人間によるかく乱への応答として、移動距離を短くするよりも長くすることの方が多く、人間による直接的なかく乱の影響が最も大きいことも明らかになった。
食物や配偶者を見つけることは元来、ほとんどの動物にとって多大な労力を要する作業であり、より遠くへの移動を強いられたり、移動に支障があったりする場合には、多くの動物が苦労を強いられることになる。また、こうした移動の変化は、鳥類による種子散布の変化や肉食動物に捕食される齧歯類の数の変化などの連鎖的影響ももたらす。
doi:10.1038/s41559-020-01380-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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