Research Press Release
扁桃体で見る動物
Nature Neuroscience
2011年8月29日
扁桃体は、情動の制御や調節にかかわるとされる脳の領域である。意外にも、この扁桃体が動物の絵に特異的に応答することが、Nature Neuroscience(電子版)に報告される。
F Mormannらは、薬剤耐性のてんかんに対処するために脳外科処置を受けた希少な患者群から神経活動の記録をとった。このような外科処置を施す前段階として、外科処置の対象領域を定めるために、脳に記録用の電極を埋め込み、てんかん発作を引き起こす脳領域を明らかにしようと試みる。Mormannらは、この手術前の監視装置を利用し、患者が動物や景観、物体、人物などの絵を見たときに埋め込んだ電極の活動がどのように変化するかを調べた。すると、患者が動物の絵を見ているときに、脳の右側にある扁桃体での活動が活発になることがわかった。これらの絵については、神経応答も速くなっていた。Mormannらは非侵襲的機能的磁気共鳴画像法を用い、てんかんを起こさない人の右扁桃体についても、動物の絵に対する特異的応答を確認できた。
脳で動物の絵に対しこのような応答がある理由はわからない。Mormannらは、ヒトの進化の過程では、ほかの動物(捕食者かもしれないし獲物かもしれない)を見ることには特別の意味があり、そのため、このような刺激に対し情動応答が引き起こされるのかもしれないという説明が可能だと示唆している。
doi:10.1038/nn.2899
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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