海洋科学:白化はサンゴの生理に永続的な影響を残す
Nature Ecology & Evolution
2021年2月9日
白化事象から4年を経て外見上回復したように見えるサンゴでも、生理的な変化が検出され得ることを示す論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。今回の知見は、サンゴ礁の保全や管理に影響を与える可能性がある。
サンゴの白化は、サンゴ礁の生態系の健康と機能に大きな影響を与えてきた。サンゴは熱によるストレスが高くなると、共生藻類が失われ、サンゴの白い組織だけが残る。共生藻類が再び入り込んで、サンゴが白化から外見上回復していることはあるが、白化がサンゴの健康に与える長期的な影響はよく分かっていない。
Ford Drury、Robert Quinnたちは、2015年に米国ハワイ州カネオヘ湾で起こった激しい白化事象の際にサンゴ(Montipora capitata)の試料を採取し、どのサンゴが白化し、どのサンゴが白化しなかったかを記録した。4年後、Druryたちは同じサンゴのメタボローム(さまざまな生理学的過程で生物が生産する小分子の総体)を測定した。その結果、白化から外見上回復しているサンゴでは、飽和脂肪酸と免疫応答分子が持続的に増加していることが明らかになった。こうした結果は、白化履歴の異なるサンゴを実験的な温度ストレスにさらす室内試験でも確認された。
Druryたちは、サンゴのメタボロームのスクリーニングが、熱に強いサンゴを迅速に突き止める費用対効果の高い手法であり、これを使うことで損傷したサンゴ礁を再生できる可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41559-020-01388-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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