環境:CFC-11全球排出量が再び減少傾向に
Nature
2021年2月11日
2019年のトリクロロフルオロメタン(CFC-11)の全球排出量が、2008~2012年の平均排出量に近いレベルまで減少したことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。また、同時掲載の別の論文では、この減少量の約60%が2017年以降の中国東部での排出量削減の結果であることを明らかにしている。これらの知見は、CFC-11排出量が再び減少傾向に入り、オゾン層回復の大幅な遅れが回避されたかもしれないことを示唆している。
モントリオール議定書は、大気中のクロロフルオロカーボン(CFC)などのオゾン層破壊物質の存在量を削減して、オゾン層を保護することを目指している。この議定書では、2010年以降のオゾン層破壊物質の製造が禁止されている。しかし、2018年に、CFC-11の大気中濃度の低下が2013年以降鈍化していることが報告され、未報告のオゾン層破壊物質の製造によって排出量が増加したことが示唆された。こうした全球排出量の増加分の多くは、中国東部からの排出による。
今回、Stephen Montzkaたちは、2018年後半から大気中のCFC-11の減少ペースが加速したことを示す観測結果が、2つの独立した全球遠隔測定網によって得られたことを報告している。Montzkaたちは、CFC-11の全球排出量が2018~2019年に約1万8000メートルトン減少し、2019年の総排出量は5万2000メートルトンになったことを明らかにした(この排出量は、2008~2012年の平均排出量に匹敵する)。
もう一方の論文で、Luke Westernたちは、韓国済州島の五山観測所と日本の波照間島の観測所での大気観測の結果と化学輸送モデルのシミュレーションを用いて、中国東部でのCFC-11の地域排出量を調べた。その結果、この地域のCFC-11排出量が2014~2017年以降、年間約1万メートルトンのペースで減少し、2019年には約5000メートルトンまで減少したことが明らかになった。この排出量減少の推定値は、同時期の全球排出量の減少分の約60%に相当する。ただし、Westernたちは、この減少分の残りについて原因を特定できなかった。
Westernたちは、東アジア諸国と世界の国々の迅速な緩和策によって排出量は2013年以前のレベルまで減少しており、こうした緩和策が維持されれば、オゾン層回復の遅れは回避できるかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03260-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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