進化:漸新世から深海に生息していたコウモリダコの祖先
Communications Biology
2021年2月19日
コウモリダコの進化上の祖先は、漸新世(約3400万~2300万年前)の頃に酸素の少ない深海環境に適応していた可能性があることを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。この知見は、コウモリダコの化石記録における1億2000万年の空白を埋めるのに役立つ。
現生種のコウモリダコ(Vampyroteuthis infernalis)は、大西洋、インド洋、太平洋の酸素が極端に少ない海域に生息している。中生代のイカ類の祖先は、大陸棚上の比較的浅い海域に生息していたことが知られており、コウモリダコが、こうした深海環境で繁殖できるユニークな形質をいつ、どのようにして進化させたのかは解明されていない。
今回、Martin Košťákたちは、ハンガリーで発見され、当初は漸新世のコウイカの一種と考えられていたイカの化石(Necroteuthis hungarica)の正体を解明した。Košťákたちは、高度な画像化ツールを用いて、この化石に現生種のコウモリダコとの構造的類似点と化学的類似点があることに気付いた。彼らはまた、この化石が現在のブダペスト近くの酸素の少ない土壌環境から発見されたことを突き止めて、この化石動物は当初、酸素の少ない深海域に生息していたという見解を示している。Košťákたちは、この化石が現生種のコウモリダコの祖先の化石であり、この化石動物が、遅くとも漸新世までには深海に移住していたと結論付けた。さらに、Košťákたちは、こうした酸素の少ない海域が形成されたことが、コウモリダコの進化史の初期に深海への適応が起こったきっかけとなったという仮説を提示している。
doi:10.1038/s42003-021-01714-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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