物理学:金でできた球体を用いた微視的スケールでの重力測定
Nature
2021年3月11日
これまで測定されてきた重力場の中で最も小さな重力場が測定されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この重力測定は、金でできた半径1ミリメートルの球体を2個使って達成されたものであり、暗黒物質の探索、量子物理学と重力の関わりなどの基礎物理学の新しい領域を探求する実験への道が開かれた。
重力は、基本的な力の1つだが、まだ十分には理解されていない。重力は、物理学の標準模型に当てはまらず、量子論とは関係のないものと考えられているのだ。重力のために非常に小さな物体の間に働く結合力を検証すれば、ニュートンの重力理論の予測からのずれなど、重力の謎のいくつかを解明できるかもしれない。しかし、そのような検証を行う場合には、重力自体とその他の原因による摂動を最小限に抑えるために厳密に制御された環境が必要なため、この検証を行うことは難しかった。
今回、Markus Aspelmeyerたちの研究チームは、質量が約90ミリグラムの金でできた球体(2個)の間の結合力としての重力を分離するための実験を計画した。この実験では、外部摂動の影響を最小化するために厳密に制御された装置が用いられた。例えば、ファラデーシールドを用いて、静電力を遮断し、1個の金の球体を真空チャンバーに接続することによって、地震と音の効果を最小限に抑えた。もう1個の金の球体は、接地した微小球に周期的に接近させて、重力結合を分離できるようにした。この重力結合は、回転信号に生じる変化によって検出された。
この実験では、古典的ニュートン物理学によって既に予想されていた結果、つまり、2個の球体の間の重力が微小球の質量と微小球の間の距離に依存することが確認された。Aspelmeyerたちは、この実験の感度には改善に余地があり、もっと小さな物体の重力測定も可能になるという考えを示している。今回の実験により、暗黒物質の重力効果や量子系間の重力結合など、これまで解明されていなかった基礎物理学の実験が可能になるかもしれない。しかし、このような試験に量子物理学を組み込むことが難しいことに変わりはないと、Aspelmeyerたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03250-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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