気候変動:過去20年間にヨーロッパで起きた前例のない干ばつ
Nature Geoscience
2021年3月16日
過去20年のヨーロッパの乾期は、人為起源の気候変動のために、過去2110年間の他の乾期よりも厳しいものであったこと報告する論文が、今週、Nature Geoscience に掲載される。
長く続く干ばつは、環境や社会に深刻な影響を及ぼし得る。例えば、2003年、2015年、2018年の夏にヨーロッパで起きた熱波は、ヨーロッパ大陸全体の食料システムや健康システムを圧迫した。しかし、こうした干ばつの原因や頻度を理解し、過去の干ばつと比較することは、高品質の気象観測が行われ続けるようになる以前の、信頼できる干ばつ記録が欠如しているために、妨げられてきた。
今回、Ulf Buentgenたちは、過去2110年にわたり成長してきた中央ヨーロッパの147本のオークの高木から得た2万7080の年輪を分析することで、過去2000年にわたるヨーロッパの干ばつの時期と厳しさを再現した。Buentgenたちは、年輪の酸素と炭素の同位体組成を測定した。これらは、高木が水や熱のストレスに応答すると系統的に変化する。その測定結果を、生きている高木や古い建物・遺跡から採取した丸太の記録と組み合わせた結果、紀元前75年以降の特定の年に干ばつが起きたかどうかを明らかにすることができた。Buentgenたちは、過去20年間のヨーロッパの干ばつの、対前年比の高い発生頻度は、古代末期小氷期(6世紀ごろ)やルネッサンス期(16世紀初頭)の顕著な歴史的干ばつと比較しても、前例のないものであることを示している。
Buentgenたちは、ヨーロッパ大陸上の大気循環とジェット気流の位置が、この地域の歴史的干ばつ発生の主要な駆動要因であると示唆している。気候変動によるこのような循環のパターンの継続的な変化は、複雑なものではあるが、最近のヨーロッパの夏がますます乾燥し高温になっていることの原因である可能性が高い。
doi:10.1038/s41561-021-00698-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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