気候変動:植物と土壌の炭素貯蔵能力はトレードオフの関係にあるかもしれない
Nature
2021年3月25日
二酸化炭素レベルの上昇に応じて植物生物量が増加すると、土壌が貯蔵できる炭素の量が減少することを、100件以上の実験の分析から明らかにした論文が、Nature に掲載される。このトレードオフは現在の陸上炭素シンクのモデルで考慮されていないので、土壌有機炭素の将来予測を修正する必要があるかもしれない。
陸上生態系は、毎年、人間活動によって排出される二酸化炭素の約30%を除去している。植物は成長を促進するために光合成を行う時に二酸化炭素を隔離するのに対し、土壌は生物量の分解によって炭素を隔離する。しかし、二酸化炭素排出量は増加し続けており、こうした炭素シンクがどのように応答するのかは明らかでない。
大気中の二酸化炭素レベルが上昇すると、植物と土壌の両方が炭素を隔離する能力が高まるという仮説があるが、今回César Terrerたちは、そうではない可能性を示している。Terrerたちは、108件の二酸化炭素レベル上昇実験のデータを分析して、この逆相関を明らかにした。二酸化炭素レベル上昇の結果として植物生物量が増加すると、土壌の炭素貯蔵量は減少するのである。Terrerたちの実験では、二酸化炭素レベルの上昇によって、草原の土壌炭素貯蔵量は約8%増加したが、森林の炭素貯蔵量は増加しなかった。これは、森林生物量が約23%増加したにもかかわらず、である。
Terrerたちは、このトレードオフが、植物が栄養を獲得する方法に関係している可能性があるという見解を示している。植物は、成長する過程で、根で土壌を掘って栄養を獲得する。Terrerたちは、このことによって土壌の炭素隔離能力が低下する可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03306-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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