物理学:原子時計の比較が記録的な精度で行われた
Nature
2021年3月25日
アルミニウム、ストロンチウム、イッテルビウムをそれぞれ用いた3台の原子時計の周波数比の測定が、記録的な精度で行われたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この知見は、より高い精度で1秒を再定義するための重要な一歩になる。
原子時計は、精度が高いため、計時やその他の精密測定のための優れた機器になっている。これは、原子が特定の周波数で光子を放出したり吸収したりするためであり、こうした周波数は環境要因の影響をほとんど受けない。これまでに18桁の精度で動作する原子時計が実証されており、1秒を定義するために現在使用されているセシウム時計の性能を上回っている。しかし、1秒をより高い精度で定義するためには、これらの原子時計を比較する必要がある。異なる原子種を使用する光時計の周波数比で、これまでに報告されている最高の精度は、測定の不確かさが17桁の精度レベルに達している。
今回、BACONコラボレーションのDavid Humeたちは、2017年11月から2018年6月にかけて、米国コロラド州ボールダーの別々の場所にある建物に物理的に収容されている3台の原子時計のネットワークを動作させて、それぞれの周波数比を測定した。その結果、これらの原子時計の比較で得られた測定値の精度は18桁の範囲内にあることが分かった。これらの測定値は、17桁以下の不確かさを持つ周波数比として初めて報告されたものである。この知見は、モバイル用、航空用、遠隔用の光時計のネットワークを開発するための基盤となり、標準理論を超える理論を検証に用いられ、1秒の再定義につながる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-021-03253-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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