進化:ヨーロッパで最古の現生人類に関する解明が進んだ
Nature
2021年4月8日
約4万5000年前のものとされるヨーロッパで最古の現生人類の骨の化石のゲノム解析が行われ、ヨーロッパにおける初期人類の移動に関する新たな知見が得られたことを報告する2編の論文が、それぞれNature とNature Ecology & Evolution に掲載される。これら2つの研究は、ヨーロッパにおける初期現生人類集団の複雑で多様な歴史を描き出している。
ヨーロッパで最古の現生人類の骨の化石は、ブルガリアのバチョキロ洞窟で発見され、放射性炭素年代測定法によって4万5930~4万2580年前のものと決定された。この最古の現生人類集団が、約4万年前まで生存していたネアンデルタール人とどの程度交流していたのかは解明されておらず、その後の人類集団にどのように寄与したのかについても、ほとんど分かっていない。
Nature に掲載される論文では、Mateja Hajdinjakたちが、バチョキロ洞窟で採集された人類標本の核ゲノム塩基配列の解析が行われて、これらの人類個体の祖先についてと、これらの個体と現代人の関係についての手掛かりが得られたことを報告している。最古の3個体は、西ユーラシアの現代人集団よりも、東アジア、中央アジア、アメリカ大陸の現代人集団と共通の遺伝的変異の数が多かった。また、これら3個体のゲノムに占めるネアンデルタール人のDNAの割合は3~3.8%であり、これら3個体のゲノムにおけるネアンデルタール人の遺伝物質の分布から、わずか6世代前かそれより近い世代の祖先がネアンデルタール人であったことが示された。これらのデータは、現生人類とネアンデルタール人の交雑が、これまで考えられていたよりも頻繁だった可能性のあることを示唆している。
Nature Ecology & Evolution に掲載される論文では、Kay Prüferたちが、チェコのZlatý kůň遺跡から出土した4万5000年以上前のものと考えられる女性の現生人類の頭蓋骨化石のゲノム塩基配列解析結果を報告している。Prüferたちは、この人類個体が、ゲノムに占めるネアンデルタール人のDNAの割合が約3%で、その後のヨーロッパ人集団、アジア人集団のいずれにも遺伝的に寄与していないと思われる集団に属していたことを明らかにした。この頭蓋骨化石は、汚染のために放射性炭素年代測定には失敗したが、ネアンデルタール人に由来するゲノム中のDNA断片が、他の初期現生人類個体のゲノムのそれよりも長かったため、この個体は4万5000年以上前に生存しており、アフリカから各地に広がった後のユーラシアにおける最古の現生人類集団の1つに属していたことが示唆された。
以上の知見を総合すると、ヨーロッパにおける人類集団の交代が連続的に起こったとする従来の学説が裏付けられる。
doi:10.1038/s41586-021-03335-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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