農業:気候変動に負けない高品質のコーヒーに目を向けよ
Nature Plants
2021年4月20日
アフリカ西部のあまり知られていない希少な野生コーヒー種が、高品質のアラビカ種コーヒーに近い香味特性を持ちながら、高温や降水量の変動に強いことを明らかにした論文が、Nature Plants に掲載される。今回の知見は、気候変動に対して強い回復力を持つと同時に広範な商業的成功に必要な香味特性を満たすコーヒー作物の開発に役立つ可能性がある。
気候変動に対してコーヒーの世界的サプライチェーンの将来を保証することは、コーヒー産業の大きな課題である。アラビカ種(Coffea arabica)は、エチオピアや南スーダンの冷涼な熱帯高地が原産のコーヒー種で、香味に優れるため高い価格で取引される。しかし、アラビカ種は最適な年間気温の範囲が18~22℃であるため、気候変動に対する回復力が弱く、世界各地のアラビカ種コーヒー農家は、すでに気温の上昇と降水の減少や不安定化による影響に見舞われている。もう1つの主要なコーヒー種であるロブスタ種(Coffea canephora)は比較的高い平均気温で生育するが、一般に高価格のスペシャリティーコーヒー市場からは締め出されている。
Aaron Davisたちは今回、ギニア、シエラレオネ、コートジボワールに固有の野生コーヒー種で、近年までギニアとシエラレオネでは絶滅したと考えられていたステノフィラコーヒーノキ(Coffea stenophylla)を分析した。野生状態のステノフィラ種は、低地の高温な熱帯条件で生育しており、乾燥に強く、葉さび病への部分抵抗性を有することが報告されている。いくつかの古い文献によると、ステノフィラ種は優れた香味を持つことが示唆されているが、1920年代以降、この種に関する官能情報についての発表は行われていない。
Davisたちは、2018年にシエラレオネで再発見された野生のステノフィラ種と、レユニオンのマスカリン諸島でわずかに栽培されていたコートジボワール原産のステノフィラ種のコーヒー豆のサンプルを、2020年にそれぞれ入手した。Davisたちは、標準化された官能評価を行って、ステノフィラ種の香味をアラビカ種サンプル2点とロブスタ種サンプル1点と比較し、ステノフィラ種が高品質のアラビカ種コーヒーに近い香味特性を有することを明らかにした。また、Davisたちは気候データをモデル化したところ、このモデルから、ステノフィラ種はロブスタ種と同等(または、やや高温)の気候条件で生育し、アラビカ種よりも少なくとも6℃以上高い平均年間気温(24.9℃)に耐え得ることが示唆された。
こうした知見は、高品質・高価格なコーヒーが栽培される気候の範囲が広がる可能性を示している。Davisたちは、野生のステノフィラ種を保護するための取り組みや、気候変動に負けない高品質の作物種や育種用資源としてのステノフィラ種の可能性をさらに研究する取り組みが必要であると結論付けている。
doi:10.1038/s41477-021-00891-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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