持続可能性:夏季と冬季のオリンピック大会の持続可能性の評価
Nature Sustainability
2021年4月20日
オリンピック大会への関心が高まり、オリンピック大会を建設、開発、運営の全ての面にわたって持続可能性の模範とするよう意図する政策が増えているにもかかわらず、1992年以降で最も持続可能性の高いオリンピック大会は2002年のソルトレークシティ大会であり、その後は持続可能性の実績が低下していることを明らかにした論文が、Nature Sustainability に掲載される。
オリンピック大会は、地球上で最も視聴率が高く、最も費用のかかるイベントである。世界の人口の半数が、パンデミックで1年先延ばしになった東京オリンピックの放送を見ると見込まれている。この夏季オリンピックにかかる費用は、多額の支出の動向を反映して、120億~280億ドル(約1兆3200億~3兆800億円)と推定されている。しかしオリンピック大会は、持続可能性に必要な変革の先駆けとなる機会を提供する一方で、オリンピック大会の持続可能性に関する系統的な評価はこれまで行われていなかった。
今回Martin Müllerたちは、1992年から今度の東京大会までの16回の夏季と冬季のオリンピック大会を分析し、それぞれの都市が、経済的、社会的、生態学的な持続可能性に関してどの程度の成果を上げたかを評価した。その結果、全16大会の平均成績は、Müllerたちが用いた指標によれば100点満点で48点で、「並」と見積もられた。これは、財政収支の点数が低く、オリンピック大会終了後の会場とインフラストラクチャーの遺産と長期的な利用可能性の点数が高いことを反映している。点数が最も高かったのは、冬季オリンピックでは2002年のソルトレークシティ大会、夏季オリンピックでは1992年のバルセロナ大会であり、1992~2008年のオリンピック大会の点数は、2010年のバンクーバー大会以降の点数よりかなり高かった。これは、持続可能性の実績が、時間とともに低下していることを示している。また、点数が最も低かったのは、冬季大会では2014年のソチ大会、夏季大会では2016年のリオ大会だった。
Müllerたちは、生の観客の人数を減らして会場のサイズを小さくする、あらかじめ決めた都市でオリンピック大会を持ち回りで開催して会場やインフラストラクチャーを再利用する、オリンピック大会と開催都市の持続可能性基準を監視し強化する独立機関を設立するなど、オリンピック大会の持続可能性を改善するための多くの方策を提言している。
doi:10.1038/s41893-021-00696-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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