持続可能性:世界人口の72%が必要な資源を確保できていない
Nature Sustainability
2021年4月26日
2017年には、世界の人口の72%が、天然資源が不足していて所得が世界平均より低い国に住んでいたこと示した論文が、Nature Sustainability 掲載される。こうした知見は、天然資源の制約を受けている国家経済の脆弱性を浮き彫りにしており、そうした国々がどのようにして生態学的な貧困のわなに陥っているかを説明できる可能性がある。
国家が発展を維持し貧困をなくすには、そのエコロジカルフットプリントに釣り合う十分な国内の天然資源か、必要なものを海外市場で競争して購入するための資金のいずれかが必要である。この2つの条件の両方が満たされない場合、国家は生態学的な貧困のわな、すなわち国内の天然資源では、必要なだけの食料、繊維製品、建築材料を供給し、二酸化炭素隔離などを行うのに十分でない状況に陥る可能性がある。
今回Mathis Wackernagelたちは、1980〜2017年の1人当たりの国内総生産(GDP)と生態学的赤字(国内の生態系が補給し得る量を超えて消費される生物資源の量)に基づいて各国を比較し、4つのカテゴリーに分類して、各国の経済が資源の制約を受けているかどうかを分析した。その結果、1980年には、世界の人口の57%が、生物資源が不足していて所得が世界平均より低い国に住んでいたことが分かった。しかし、1980年の全世界の生態学的赤字はわずか19%であった。対照的に、2017年には、世界の人口の72%が、生態学的赤字にさらされていて所得が平均以下の国に住んでおり、全世界の生態学的赤字は73%に上昇していた。さらに著者たちは、生態学的な赤字を抱える高所得国と低所得国は、2017年に世界で1人当たりが利用できる生物資源より、それぞれ3.7倍と1.3倍多くの生物資源を消費していたことも見いだした。
著者たちは、自然の能力を高めることや福祉を優先する消費習慣にシフトすることなど、資源需要の形を変える戦略を立てるべきだと提言している。
doi:10.1038/s41893-021-00708-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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