植物:魅力の大きな植物に研究が偏っている可能性
Nature Plants
2021年5月11日
研究者は、生態学的な重要性とは無関係に、美しく魅力的な植物を研究の対象にしている傾向があることを示唆する論文が、Nature Plants に掲載される。今回の知見は、保全生物学的に重要であり、より良い研究活動への有用な情報になると考えられる。
植物は現代科学の発展に重要な役割を果たしており、今もなおその特性の分析が続けられている。実験室で研究を行う研究者は、成長速度や遺伝学的特質などの機能的評価基準を考慮して研究対象の植物種を見いだしている可能性がある一方で、野外で研究を行う研究者は、非生態学的なさまざまな要因に基づいて特定の種を優先している可能性がある。こうした筋書きは研究結果を変える可能性があり、将来の保全の取り組みに影響を与えることも考えられるが、このようなバイアスの定量化は難しかった。
今回、Martino Adamoたちは、過去45年間の査読付き論文280編に記述がある、南西アルプスに典型的な113種の植物を分析した。その結果、研究者からの注目を集める形質が、観察しやすい花や目立ちやすさなどの形態的特徴であることが見いだされた。最も研究されているのは青色の花を咲かせる植物で、白や赤、ピンクの花を咲かせる植物の方が、基準とした緑色や褐色の花を咲かせる植物よりも多くの論文に記述されていた。植物が自らを他の植物の中で目立つようにするための草丈も、研究の対象になりやすいことの一因であった。また、希少性は、研究の注目を集める大きな要因ではないことも明らかになった。
Adamoたちは、このような形態的形質は、植物の生態学的な意味や重要性に影響を与えるものではなく、「美的バイアス」と見なされると論じている。美的バイアスは、他の植物や生態系全体の健全性とは無関係に、注目度のより高い植物の保全の取り組みが優先される可能性があるという点で悪影響があると考えられる。
doi:10.1038/s41477-021-00912-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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