古生物学:米国テキサス州で発見された古代のカメの化石がもたらす進化の新知見
Scientific Reports
2021年5月21日
最古の曲頸亜目(Pleurodira)の北米種が発見されたことを報告する論文が、今週、Scientific Reports に掲載される。曲頸亜目のカメは、脅威を感じると、首を横に曲げて甲羅に収納することが知られている。今回の知見は、曲頸亜目のカメがセノマニアン時代(1億~9400万年前)に北米に移動した可能性を示唆している。
Brent Adrianたちの研究チームは、ギリシャ語のPleuro(横)、カドー語のCha'yah(カメ)、北米のアパラチア地方にちなんで、この最古の北米種をPleurochayah appalachiusと命名した。P. appalachiusの化石は、米国テキサス州のウッドバイン層のアーリントン化石主竜類遺跡で発見され、セノマニアン期前期~中期のものとされた。これは、ユタ州で発掘されたPaiutemys tibertの化石よりも古い。Paiutemys tibertは、セノマニアン期後期のものと年代測定されて、これまで最古の曲頸亜目の北米種と考えられていた。Adrianたちは、P. appalachiusが海洋環境での生活に適応していた可能性があると考えており、それを示唆する数々の特徴を報告している。例えば、肩関節の一部を形成している上腕骨端部の頑強な骨性突起は、遊泳時にストロークの力を高めた可能性があり、甲羅の骨の分厚い外表面は、甲羅の強度を高め、海洋環境に生息するP. appalachiusを保護していたと考えられる。
また、カメ種間の進化的関係の分析も行われ、P. appalachiusが1億4500万~1億年前にゴンドワナ超大陸で出現した曲頸亜目であるボトレミス科の初期種であったことが示唆された。Adrianたちは、こうした知見とP. appalachiusが海洋環境に適応していたことを根拠として、ボトレミス科の初期種が、セノマニアン時代あるいはそれ以前にゴンドワナ超大陸から大西洋中央部またはカリブ海を経由して北米に移動したという仮説を提示している。
doi:10.1038/s41598-021-88905-1
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