気候科学:米国の都市における熱ストレスへの曝露に集団間格差が生じている
Nature Communications
2021年5月26日
米国の大部分の都市において、都市部の熱ストレスへの曝露の影響は、有色人種と低所得世帯で不釣り合いに大きいと考えられることを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。熱への曝露における格差の所在を明らかにすることは、こうした格差を縮小するための政策介入を設計する将来の取り組みに役立つ可能性がある。
都市の内部では、緑地、都市形態、都市サイズなどの特徴が一定でないため、熱強度の分布に偏りがある。そのため、都市住民の熱への曝露レベルに、地域格差が生じる場合がある。
今回、Angel Hsu、Glenn Sheriffたちの研究チームは、衛星観測による夏季日中気温データと2017年の米国国勢調査による社会人口統計学的データを組み合わせて研究を行った。その結果、米国最大の市街地のうち169地域で、平均的な有色人種の住民が居住する国勢統計区(行政区)の夏季日中の都市ヒートアイランド強度が、非ヒスパニック系白人が居住する国勢統計区よりも高いことが分かった。また、市街地のほぼ半数で、平均的な有色人種の住民がさらされている夏季日中の都市ヒートアイランド強度が、貧困ライン以下で生活する平均的な住民よりも高いことが判明した。平均すると、米国内の有色人種の住民の10%が貧困ライン以下で生活している。これに対して、貧困ライン以下で生活する世帯は、全ての人種集団と民族集団を通じて、貧困ラインの2倍のレベルで生活する世帯よりも熱への曝露レベルが高かった。
今回の研究は、社会人口統計学的要因のために同一都市内で熱への曝露に格差が生じていることを示唆しているが、熱への曝露に人種や民族による格差が生じていることを所得格差によって十分に説明できないと考えられる。
doi:10.1038/s41467-021-22799-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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