進化:新発見の植物化石によって被子植物の起源の解明に一歩近づく
Nature
2021年5月27日
中国の1億2500万年前の泥炭化石から新たに発見された数百点の植物標本が、被子植物の起源に関する新たな手掛かりをもたらした。この知見を報告する論文が、Nature に掲載される。これらの化石標本は、被子植物の近縁種であり、多様に繁殖したことが、他の植物化石との比較から示唆されている。
被子植物には2つの特徴がある。1つが心皮という雌性生殖器官で、その内部に1つ以上の胚珠が包まれている。もう1つが殻斗と呼ばれるカップ状の外部組織層で、胚珠を取り囲んでいる。この外層は、他の種子植物には見られない被子植物の特徴だ。これらの特徴が出現した過程を説明することは、被子植物の起源を明らかにする上で重要な一要素だ。
今回、Gongle Shi、Peter Craneたちの研究チームは、中国の内モンゴル自治区で新たに発見された白亜紀前期の泥炭化石から抽出された、数百点の保存状態が極めて良好な絶滅種の種子植物の植物標本の構造を調べた。それらの近縁種である可能性のある国際的なコレクション所蔵の中生代(約2億5200万年~6600万年前)の植物化石との比較から、これらの植物標本の生殖構造には明白な被子植物様の特徴があること、特に、後方に曲がった殻斗が存在することが明らかになった。また、種子植物の大型データセットの系統発生解析(植物の系統樹をつなぎ合わせることに相当する)も行われ、これらの形態上の類似点と構造上の類似点が明確に示された。これは、今回発見された植物標本が現生被子植物に極めて近縁なことを示唆している。以上の結果は、著者たちがangiophyteと呼ぶ植物の中に明確な被子植物の祖先種が存在することを示している。この祖先種は、白亜紀前期または中期の花の出現よりもかなり早い中生代以前にさかのぼることができる。
被子植物の起源をさらに詳しく解明するには、さらに多くの化石が必要となるが、こうした近縁種の化石を明らかにすることは、種子植物の進化や、心皮や雄ずいなど被子植物のさらなる特徴の出現に関する将来の研究に役立つだろう。
doi:10.1038/s41586-021-03598-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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