気候変動:人為起源の気候変動による熱関連死の評価
Nature Climate Change
2021年6月1日
全球的な熱関連死の37%は人為起源の気候変動が原因になっているとした論文が、Nature Climate Change に掲載される。こうした知見は、これまで以上に野心的な緩和・適応戦略を実施して、気候変動が一般市民の健康に及ぼす影響を低減することが喫緊に必要なことを明らかにしている。
過去2世紀で、人為起源の気候変動の結果として全球気温が平均1℃上昇しており、一部の地域では他の地域よりも温暖化が進んでいる。こうした気温の上昇は、熱波の頻度と強度の上昇とともに、人間の健康に影響を及ぼす。
今回、Ana Vicedo-Cabrera、Antonio Gasparriniたちの研究チームは、43か国の732地点のデータを用いて、過去30年間(1991~2018年)にわたる人為起源の気候変動が熱による人間の死亡に及ぼす影響を調査した。疫学的手法と気候モデルを用いた研究の結果、平均で全球的な熱関連死の37%が人為起源の温暖化に起因することが判明した。Vicedo-Cabreraたちは、産業革命前からの気候変動による死亡率の上昇は、人間が居住する全ての大陸で検出できることを明らかにし、南ヨーロッパや南アジア、西アジアの温暖な地域では、気候変動による死亡の割合が大きいことを指摘している。
今回の調査には、アフリカや南アジアの一部など、いくつかの重要地域のデータは含まれておらず、一部の国では、一部の都市のデータしか収集できなかった。関連するNews & Viewsでは、Dann Mitchellが、人口増加率が極めて高い地域についてはデータが得られないため、地域差を解明することが重要になるという見解を示している。
doi:10.1038/s41558-021-01058-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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