経済学:世界の消費者の食料支出額の27%が農業従事者に渡っている
Nature Food
2021年6月8日
世界の消費者の食料支出の27%が農業従事者に渡っていることを報告する論文が、Nature Food に掲載される。この食料支出の最も大きな部分は、農産物が農場から出荷された後のバリューチェーンに渡っていた。この知見は、食料収入をもっと公平に分配することを目的とする公共政策に役立つ情報になると考えられる。
食料のサプライチェーンには、生産、加工、流通、消費が含まれる。このサプライチェーンの過程で適切に対象を絞った介入策を実施することは、いくつかの持続可能性目標を達成するために必要な奨励金や規制を設計する上で非常に重要である。しかし、サプライチェーンの各部分とそれぞれの規模、特に他国や国内経済の他の部門との比較については、十分に明らかになっていない。
今回、Christopher Barrettたちの研究チームは、もともと米国に適用された類似の方法を発展させて、農業従事者と消費者の間の食料バリューチェーンの重要性を評価するための普遍的で標準化された「グローバル食料ドル(global food dollar)」 法を開発し、世界の食料経済の約90%をカバーする、中・高所得国(計61か国)の11年間(2005~2015年)のデータを含む大型データセットに適用した。その結果、消費者の食料支出額のうち、農業従事者に渡る金額の占める割合は、内食型支出の場合には平均27%(全体の3分の1未満)であり、外食型支出の場合にはさらに小さくなる傾向のあることが明らかになった。また、その割合は、国民所得の増加に伴って、有意に低下する傾向にある。
Barrettたちは、世界各国が食料システムの経済的・環境的・社会的影響の問題に取り組む中で、規模が大きく、拡大を続ける出荷後の食料バリューチェーンは、今後、一層の注目に値すると結論付けている。これは特に、都市化と所得の増加がある場合に当てはまり、サプライチェーンの延伸と加工食品の増加につながると予想される。
doi:10.1038/s43016-021-00279-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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