工学:経皮ガスを集めて血中アルコール濃度評価に役立てるヘッドセット型デバイス
Scientific Reports
2021年6月11日
このほど実施された原理証明研究で、人間の耳にフィットする新しいデバイスを使って、皮膚を介して、血中アルコール濃度のリアルタイムの変化を非侵襲的に測定できたことを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
このデバイスは、東京医科歯科大学の三林浩二(みつばやし・こうじ)たちの研究チームが考案したもので、市販のヘッドセットを改良した、人間の耳の皮膚から放出されるガスを収集する部分と、エタノール蒸気センサーによって構成されている。このセンサーは、エタノール蒸気を検出すると、光を発し、その光の強度からエタノールの濃度を算出できる。
三林たちは、このデバイスを用いて、体重1キログラム当たり0.4グラムのアルコールを摂取した男性被験者3人の耳から放出されるエタノール蒸気を140分間継続的にモニタリングした。また彼らは、被験者の呼気に含まれるエタノールの濃度も、別のエタノール蒸気センサーとエタノールに曝露すると変色する試薬を含むデバイスを用いて定期的に測定した。
三林たちは、耳から放出されるエタノールと呼気に含まれるエタノールの濃度の経時的変化が、全ての被験者において類似していたという観察結果を明らかにしている。これまでの研究で、呼気中のエタノール濃度と血液中のエタノール濃度が相関していることが明らかになっており、この知見は、三林たちの考案したデバイスを呼気分析計の代わりに用いて、血中アルコール濃度を評価できることを示している。今回の研究では、耳から放出されたエタノールの平均最高濃度は148 ppbであり、これはこれまでの研究で報告された手の皮膚から放出されたエタノール濃度の2倍だった。従来のデバイスは、呼気に代わる低侵襲度の測定法として、手を使って血中アルコール濃度を測定していた。口にチューブを挿入する必要がないためである。今回の知見は、耳が手よりも適切な測定部位と考えられることを示唆している。
三林たちは、このデバイスを用いて、例えば疾患スクリーニング検査において、皮膚から放出される他のガスを測定できる可能性があるという見解を示している。
doi:10.1038/s41598-021-90146-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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