健康:電気刺激を加えることで疲労を軽減する携帯デバイス
Communications Biology
2021年6月11日
頸部の皮膚から迷走神経に電流を流す携帯デバイスが、断眠させた人の疲労を軽減し、マルチタスク能力を向上させるために役立つ可能性のあることを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。迷走神経は、気分や幸福感と関連していることがこれまでの研究によって明らかになっており、脳と消化器系と数種類の重要器官の間で信号を伝達する役割を果たしている。
疲労は、反応が遅くなったり注意が散漫になったりすることで事故やミスを起こすリスクを増大させ、医療、交通機関、軍隊などに関係する専門職にとって深刻な問題となり得る。電流を使って迷走神経を刺激すると、記憶と学習が向上することが、これまでの研究で示されている。今回、Lindsey McIntireたちの研究チームは、皮膚に電流を流して片頭痛や頭痛を治療するために承認を受けた市販の装置を使用し、迷走神経を刺激して疲労を軽減できるかを検証した。今回の研究では、40人の現役の米国空軍兵士を34時間断眠させて、9つの時点で、注意力を集中させる能力とマルチタスク能力の検査が行われた。12時間断眠した被験者の一部に刺激装置を適用して頸部に6分間電流を流し、残りの被験者には、電流を流さないプラセボ装置を適用した。
McIntireたちは、迷走神経刺激を受けた被験者の方が、集中力とマルチタスク能力を検証する課題の成績が優秀で、プラセボ刺激を受けた患者よりも疲労が少なく、エネルギッシュだったことを明らかにした。これらの効果は、刺激後12時間でピークに達し、注意力の向上は最長19時間持続した。以上の知見は、携帯デバイスによる迷走神経刺激が、カフェインや他の神経刺激剤より副作用が少なく、睡眠不足の負の影響のいくつかを軽減できる使いやすく安全な方法となる可能性を示唆している。ただし、この方法を睡眠不足の治療法として広く実施できるかを検証するためには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s42003-021-02145-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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