医学研究:アルツハイマー病ワクチンの安全性と免疫原性が実証された
Nature Aging
2021年6月15日
アルツハイマー病ワクチンAADvac1の第2相臨床試験が実施され、AADvac1の安全性が確かめられ、AADvac1が軽度アルツハイマー病(AD)患者において免疫応答を誘発することが明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Aging に掲載される。AADvac1は、研究サンプル全体では患者の認知低下に検出可能な影響を及ぼさなかったが、一部の被験者を対象としたさらなる分析では、何らかの利益がある可能性が示唆されており、この点は、今後の研究で確認する必要がある。
アルツハイマー病の病理学的特徴は、タウと呼ばれる有毒なタンパク質が患者の脳内に蓄積し、拡散することである。これが原因となって、広範囲にわたるニューロンの死滅が起こり、最終的に認知症が起こると考えられている。免疫療法は、有毒なタウタンパク質の発現を低下させ、患者の認知低下を遅らせるために役立つ戦略として検討されている。
今回、Petr Novakたちの研究チームは、第2相無作為化プラセボ対照試験を実施して、軽度AD患者196人(平均年齢71.4歳、男性45.1%、白人100%)にペプチドワクチンAADvac1またはプラセボを複数回投与し、ワクチンの安全性、免疫原性(免疫応答を誘発する能力)、臨床的有効性を、2年間にわたってモニタリングした。その結果、AADvac1の安全性が確認され、ワクチンを接種したグループの被験者は、ワクチンのペプチドに対する抗体レベルが高いことを明らかになった。しかし、認知能力に対するAADvac1の影響に関しては、研究サンプル全体で、統計学的に有意なプラスの効果もマイナスの効果も認められなかった。また、探索的解析では、AADvac1は、神経変性のマーカーである血漿ニューロフィラメント軽鎖タンパク質(NfL)の蓄積を遅らせることが示唆された。さらに、この論文には、被験者の一部を対象として、関連性のあるバイオマーカーと臨床転帰を調べることを目的とした他の探索的解析と事後解析の結果も示されている。
Novakたちは、AADvac1は忍容性が良好で、タウに対する免疫応答を誘導したが、認知能力に対する統計的に有意な利益が得られなかったと結論付けている。これは、多くの患者にADタウ病変が観察されなかったことや、研究のサンプルサイズが小さかったことが原因である可能性がある。従って、これらの結果を再現し、AADvac1の臨床的有効性の可能性を十分に検証するためには、疾患バイオマーカーの存在の有無に応じて層別化された大規模な臨床試験が必要である。
doi:10.1038/s43587-021-00070-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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