気候変動:カスタマイズされたオンラインメッセージによって共和党系有権者の気候変動の理解を変える
Nature Climate Change
2021年6月15日
オンラインメッセージを、米国の共和党系有権者の理想に訴え掛けるようカスタマイズすることで、気候変動とそのリスクと重要性に対する共和党系有権者の理解を深めることができるとする論文が、Nature Climate Change に掲載される。米国の気候政策と気候変動対策に対する超党派の支持を確実に得るには、保守的な有権者の理解を深める必要がある。
2020年の時点で、米国人の73%は地球温暖化が起こっていると確信し、62%が人間活動が原因だと理解していた。しかし、この世論の変化は、主に民主党によって推進されたものである。これまでの調査では、大統領と議会が地球温暖化をどの程度優先順位の高い課題と考えるべきかという質問に対して、民主党系有権者の83%が「高い」または「非常に高い」優先順位と答えたのに対し、共和党系有権者でこのように答えたのははわずか22%だった。気候変動に関するコミュニケーションは、メッセージの内容や伝え手が受け手の価値観やアイデンティティーと共鳴していれば、受け手が納得する確率が高くなる。従って、気候変動に関する共和党系有権者の関与を高めるための目標を定めたコミュニケーション戦略が必要とされる。
今回、Matthew Goldbergたちの研究チームは、下院の2つの激戦区(ミズーリ州第2下院選挙区とジョージア州第7下院選挙区)の保守的な有権者に向けて、気候変動をテーマとしたカスタマイズされたオンラインメッセージを発信する1か月間の広告キャンペーンの現場実験を実施した。この広告キャンペーンでは、New Climate Voicesという動画シリーズが公開された。この動画シリーズは、社会的アイデンティティー理論、エリートの合図、説得の理論を用い、保守派と共鳴する可能性の高い代弁者がプレゼンテーションを行った。このキャンペーンの前後に実施された1600人の調査結果を比較すると、この2つの選挙区の共和党系有権者において、地球温暖化が起こっており、「主に人間活動によって引き起こされている」ことを理解している人の割合が数ポイント増加していた。気候変動が個人的に「ある程度」「非常に」または「極めて」重要であり、将来世代に「中程度」から「大きな」害をもたらすと考える人も増えていた。
関連するNews & Viewsでは、Phillip Ehretが、「今回の知見は、たとえ大きく二極化していて政治色の濃い問題であっても、正しい戦略が正しい方法で用いられれば、メッセージを共和党系有権者の信念を変えるために設計し、使用できることを示している」と指摘している。
doi:10.1038/s41558-021-01070-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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