福島原発事故:周辺住民避難の正当性
Scientific Reports
2011年9月8日
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所(NPS)での大惨事を受けて、放射線量の評価を行う研究が実施され、このほど、その結果が明らかになった。これによれば、福島第一原発から30キロ以内に居住する人々に対する政府の避難指示や自主避難要請は、放射線防護の観点から正当なものであったことが示唆されている。この研究結果を報告する論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。
去る3月11日に日本で発生したマグニチュード9.0の地震に伴う津波で、福島第一原発の冷却システムの電源が失われた。その後、同発電所内で複数の爆発が起こり、さまざまな人工放射性核種(例えば、ゼノン133、ヨウ素131、セシウム134)が環境中に放出された。床次眞司(とこなみ しんじ)たちは、こうした放射性核種が生活環境に及ぼす影響を評価するため、2011年3月と4月に福島第一原発の北西を通る高速道路に沿って大気中の放射線量率の自動車探査を実施した。また、床次たちは、福島第一原発にさらに近い高汚染区域を調べて、避難した同区域の住民の外部被曝線量を推定した。
(福島第一原発から比較的離れた)高速道路沿いでの大気中放射線量率は、3月11日の前より後のほうが高かった。また、高汚染区域での最大線量率は36μGy h-1で、(福島第一原発から約20キロ離れた)浪江町から福島市などに避難した住民の累積外部被曝線量は、最大で約68 mSvと推定された。以上の結果をもとに、床次たちは、高汚染区域からの住民の避難は、放射線防護の点で正当なことだったと報告している。
doi:10.1038/srep00087
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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