天文学:ベテルギウスの「大減光」の原因は塵のベール
Nature
2021年6月17日
赤色超巨星ベテルゲウスの「大減光」は、近傍に塵の塊が形成し、南半球に低温域が形成した結果だとする論文が、今週、Nature に掲載される。この観測結果は、大質量星の進化の最も一般的な最終段階で起こる顕著な質量減少事象の機構を解明する手掛かりになる。
2019年11月から2020年3月にかけて、地球に2番目に近い赤色超巨星であるベテルギウスの可視光度が低下するという歴史的現象が全世界で観測され、その原因について、各地でさまざまな憶測が飛び交った。この「大減光」については、当時、超新星爆発が近々起こることの兆候とする論文が複数発表されたが、その後、爆発は観測されていない。
今回、Miguel Montargetesたちの研究チームは、「大減光」が起こる前と起こっている時のベテルギウスの表面を調べた。チリの超大型望遠鏡(VLT)による高角度分解能の観測が行われ、「大減光」が起こっている時に、ベテルギウスの南半球の光度が通常の10分の1に低下し、この暗い部分の形状と暗さの度合いは、3か月の監視期間中に急速に展開したことが明らかになった。観測とモデル化の結果、ベテルギウスの可視表面上に出現した低温域で局所的に温度が低下したことが明らかになり、「大減光」がベテルギウスの超新星としての爆発が近々起こることを示しているとする理論は否定された。注目すべきことに、Montargetesたちは、こうした多様で急速に展開する局所的な表面挙動が、明確だが不均質な質量減少事象と関連していると結論付けている。そうした事象が赤色超巨星ベテルギウスでリアルタイムで観測されたのは初めてのことだ。
今回の研究は、赤色超巨星の減光の背後にある過程や、星の構造と進化に関する新たな手掛かりをもたらしている。
doi:10.1038/s41586-021-03546-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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