公衆衛生:ワクチンは英国でのSARS-CoV-2新規感染を防ぐ効果がある
Nature Medicine
2021年6月9日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するオックスフォード・アストラゼネカ社製ワクチン(ChAdOx1)とファイザー・ビオンテック社製ワクチン(BNT162b2)の初回接種は、英国でのSARS-CoV-2新規感染の発生率をそれぞれ61%と66%低下させること、またこの値は2回目の接種後にはそれぞれ79%と80%に上昇することが、Nature Medicine に掲載される論文で報告された。ワクチン接種の効果が最も高かったのは、症状が見られる新規感染やウイルス負荷(体内のウイルス量)が高い新規感染の抑制である。ワクチンの種類によって有効性に違いがあることを示す証拠は得られていない。
オックスフォード・アストラゼネカ社製ワクチン(ChAdOx1)とファイザー・ビオンテック社製ワクチン(BNT162b2)のSARS-CoV-2に対する有効性は、症状のあるSARS-CoV-2感染に対する大規模な無作為化臨床試験によって評価されている。しかし、地域ベースの研究によるワクチンの現実世界での有効性の評価や、最近になって流行が懸念されている変異株(VOC;最初に英国で見つかり、感染性が高くて毒性も強い可能性のあるアルファ株など)に対する有効性の評価も必要となっている。
K Pouwelsたちは、英国国家統計局の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)調査のデータを使い、ChAdOx1とBNT162b2について、アルファ変異株も含めたSARS-CoV-2への新たな感染を防ぐ効力を評価した。この調査は、英国全体から無作為に選ばれた一般世帯の2歳以上の住人を対象にした、地域ベースの大規模なものである。2020年12月1日から2021年5月8日にかけて、38万3312人(平均年齢55歳)の参加者から、SARS-CoV-2感染に関するPCR検査の194万5071の結果が集められた。そして、ChAdOx1、BNT162b2どちらを接種した場合でも、ワクチンの初回接種から少なくとも21日後には、SARS-CoV-2新規感染の検査で陽性となるリスクが大幅に低下したことが分かった(ChAdOx1では61%、BNT162b2では66%)。また、ワクチン接種の新規感染数を減らす効果が最も高くなるのは2回目の接種後で(ChAdOx1で79%、BNT162b2で80%)、有症状感染やウイルス負荷の高い感染に最も高い効果が見られた。ワクチンの種類や、参加者の慢性疾患の有無によってこうした有効性に違いが生じることはなかった。
doi:10.1038/s41591-021-01410-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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